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兵長の思惑

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「…やっと寝たか」
エレンの眠るベットの枕元に腰かけたままリヴァイの右の手のひらはエレンにしっかり捕まれてしまっている。
「ホントめんどくせぇヤツだな」
呟きながらもそのめんどくせぇヤツを放っておけないのもリヴァイは自覚していた。
エレンが何を欲しがっているかはわかっているつもりだ。
本人はなんとか隠そうと努力しているようだがさすがに一回り以上離れた年のリヴァイにそう簡単に隠せるものではない。
リヴァイはブーツを脱ぎそれを几帳面にベットサイドに揃えて置く。
「さて、どうしたもんか…」
すでに答えは決まっているのに、そんなふうに呟いて自身の気持ちをごまかそうと勤めてみたのは何回目だろうか。
そしてそれが徒労に終わるのも。
リヴァイは右手の位置を変えないように気を付けながら自身の細身をするりとエレン横に滑り込ませる。
「いつまで抑えてんだろうな。なぁ、エレン?」
空いた左手で前髪を掻き分けてやれば少し隈が浮いた目元があらわになった。
それが少しでも明るくなればいいと目尻の唇を押し当ててエレンに意識があるときは一度も言ったことがないあいさつをいってみたくなって「おやすみ」とささやき、そのことにリヴァイは自身も少し照れながら目を閉じた。


朝日の光は入らなくとも日々の訓練のお陰で朝日が上る頃には目が覚める。
エレンはいつもよりまぶたが重いことを意識しながら仰向けのまま目を開けた。
いつもの天井、いつもの自分の部屋、だが少しいつもと違う空気。
(…そうだ、昨日は兵長がいて…)
なんとなく体の左側が暖かく感じる。
エレンは何の気なしにそちらに目を向け文字通り凍りついた。
金環の瞳が落ちそうなほど目を見開き硬直する。
最初の言葉を発するまでたっぷり5秒はかかった。
「………え?……へいちょ…?」
目の前には半径1メートル以内によるのも緊張してしまう上司がいる。
しかもあと15センチで顔同士が接触してしまいそうな距離に。
仰向けのままのエレンとは違い、リヴァイはエレンの方に体を向けていつもは凛としている背中を少し丸めて眠っている。
なおかつ二人の間にあるエレンの左手をなにか大事なもののように両手で握っていた。
(え?え?なんで!?ってかへいちょうのねがおめっちゃきれい…)
混乱しすぎてまとまらない感想がエレンの頭を駆け巡る。
「ん……」
リヴァイ口から吐息が漏れた瞬間に唐突に眉が寄る。
2、3度まぶたを震わせて彼特有の切れ長の目が薄く開いてぱちぱちとまばたきを繰り返す。
「……ん?…あぁ、起きたか。エレン」
ゆっくりと焦点を会わせてリヴァイにしては珍しく少し表情を緩めて囁く。
「え?ってゆーかもしかして昨日からずっと居てくれたんですか!?へいちょっ!!なんで!?」
リヴァイの言動ににエレンの顔が赤く染まっていく。それをごまかすようにエレンは疑問符を捲し立てた。
「うるさい。耳元でで騒ぐな」
そんなエレンにリヴァイはまた眉を寄せ表情を隠してしまう。
「だって!」
なおも言い募ろうとするエレンを制しリヴァイは腹筋を使って体を起こす、と同時にエレンの左手をそっとはなした。
「一緒にいろっていったのはお前だろ。そんぐれぇならいつでもしてやる」
ポカンとするエレンをよそに、リヴァイはもうすでにブーツに手をかけている。
「リヴァイ兵長…」
エレン口から漏れたそれが呼び掛けではないとわかっていながらリヴァイはちらりと視線を投げ「なんだ?」と答える。
「っ!じゃぁこ」
「却下だ」
瞬順のあと、思い切ったように言葉を紡ごうとするエレンの言葉の先がわかってリヴァイはブーツをはきながら目線も寄越さず間髪いれずに遮った。
「えぇ!?」
リヴァイはエレンの大きく太い字で話が違うと書いてありそうな顔を立ち上がり際に一瞥して堪えきれずにくすりと笑った。
しかしそれは一瞬のことですぐにいつもの顔に戻ってしまう。
「今日は点呼はナシだ。このまま上がって朝飯作ってろ。準備ができたら俺も行く。わかったな?」
言いながらリヴァイは扉へと歩いていく。
「はい!」
返事をしたエレンに小さくうなずいて木戸を押し開きそこえ体を滑り込ませるようにすり抜けていく。
なんの余韻も残さずに地下の木戸はパタン、と音をたてて閉まった。
(兵長が…笑った?)
エレンの顔にまた違う意味で血が集まりだす。
1人残された地下でエレンは両手で顔を覆って心中で1人ごちる。
(…っ!アンタ可愛すぎだろっ!!)